ミャンマーの子どもを診察する岡山大の医師(右)=木股教授提供
養成機関が少なく、人員不足が慢性化している同国の医師に技術や知識を教え、医療水準を引き上げる手助けをする。今後、設置場所や診療科などについて同国保健省と協議し、数年中の着工を目指す。
岡山大の医療支援は、2002年、当時、医学部教授だった岡田茂さん(72)の尽力で同国保健省と協定を結んだことに始まる。岡田さんは、後輩の医師を誘って首都ネピドーや同国最大の都市ヤンゴンを訪れ、医師同士の勉強会や治療指導などを行った。
岡田さんは、父親が第2次世界大戦中、ビルマ(現在のミャンマー)戦線に従軍し、英軍の捕虜となった際、現地の人に食べ物をこっそり分けてもらったという話を聞いて、現地の人に親近感を抱いていたという。
05年に岡山大を退職すると、大学院医歯薬学総合研究科の木股敬裕教授(形成再建外科)が支援活動を引き継いだ。同大学は10年からは手術の支援も始め、形成外科を中心に現地の患者約160人を治療した。
一方、岡田さんもNPO法人「日本・ミャンマー医 療人育成支援協会」(岡山市)の理事長として支援を続けた。NPOのメンバーらと何度も現地に行った木股教授によると、同国では、人口10万人当たりの医 師数が約30人で、日本の約7分の1。医学部のある大学は4施設だけで、医師不足が慢性的。地方ではやけどをしても治療が受けられないケースも目立ち、や けどによる死者が多いという。
窮状を救いたいとの思いを強める一方で、木股教授は「医療支援だけを続けていても、先細りになる。まずは人 づくりだ」と実感。岡山大として医師教育に力を注ぎ、医療の質を向上させる臨床アカデミー設立を目指すことになった。建設資金はNPOがスポンサー企業を 募る計画という。
木股教授は「定期的に医師を派遣する制度をつくり、多くの患者を救える仕組みにしたい。ミャンマーとの交流を深め、大学の国際化も進めたい」と話している。(辻田秀樹)
(2012年3月3日 読売新聞)