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<ミャンマー>経済開発と環境破壊、調和をどこに

【バンコク西尾英之】民主化の進展で国際的な孤立を脱し、新たな経済進出先として注目を集めるミャンマー。中でも南部ダウェーにタイ企業が計画中の「ダウェー深海港開発計画」は、東南アジア最大規模の工業団地構想として各国投資家の関心は高い。一方で、環境破壊の懸念や移転を強いられる地元住民の不安も根強く、初めて本格的な経済開発に乗り出すテインセイン政権はいきなり「調和のとれた開発」という難題に直面する。毎日新聞ヤンゴン通信員が現地から報告する。

穏やかな風と透明な海。ダウェーの北約30キロのナブル地区の海岸線は、南国のリゾート地のような美しさだ。砂浜に人影はなく、内陸部に草ぶきの農家や漁師の家が点々とあるだけ。現地ではすでに住民の立ち退き交渉が始まっている。

 「移転しても新しい農地は提供されない。仕事を失う補償として年収10年分の支払いを求めているが、まだ合意できていない」。村ごと集団移転を求められているマインジー村のカンウィンさん(53)は話す。

 住民は「移転賛成」と「反対」に割れている。

 開発会社は移転住民に近代的な住宅を提供し、集団移転先にはこれまで現地になかった病院や市場も建設するという。「失うもののない貧しい人々は移転に賛成する一方、土地を所有しゴム園などを営む比較的豊かな農民層は反対だ」。現地の環境保護活動家、ハインさんは指摘する。

 急速な国内改革を進めるテインセイン政権の大きな狙いは、国際関係を改善して海外からの投資を呼び込み、経済の立て直しを図ることだ。国会では今月、進出する外国企業に最長8年間の免税を認める法案が審議される。

 ダウェー開発は外国企業誘致の目玉事業となるはずだ。だが強引に進めれば、国内の反対世論の高まりからテインセイン大統領が昨年、建設中断を発表した中国企業による巨大ダム事業の二の舞いになりかねない。

 1月下旬にダウェーを訪れたティンアウンミン副大統領は「移転補償は住民の意向に沿うものでなければならない」と住民側に立つ一方で、「開発が実現すれば多くの雇用が生まれ、これまで仕事がなく外国へ働きに出ていた住民が帰ってくることができる」と、開発が住民の利益になることを強調した。

 地元住民を支援するハインさんは「開発そのものに反対はしない。環境と地元住民に配慮した持続可能な開発ならば、我々は政府(の開発方針)を支持する」と話し、政府の対応を見守る考えを示す。

 【ことば】ダウェー深海港開発計画

 タイ最大手の建設企業「イタリアン・タイ開発」(ITD)社が旧軍事政権との間で開発契約を締結。日本の鹿島臨海工業地帯のように砂浜を掘り込んで大型船舶が接岸できる港を建設し、その周囲に発電所、石油精製施設、工業団地などを配置する。同社によると総面積は東京・山手線の内側の約4倍、250平方キロに上る。タイ国境から160キロという近さを生かし、山間部に道路を建設してタイ側と直結。タイ、ベトナムなどインドシナ半島からインド洋方面へ向けた輸出拠点や、安い人件費を生かした加工基地としての役割を狙う。
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