3月1日(木)7時55分配信
ミャンマーへの欧米の経済制裁解除を待たず、最大都市ヤンゴン周辺では、外国企業からの投資増大を見込んで土地の先買いや外国人用の住宅建設が進み、早くも不動産バブルの様相をみせている。
ヤンゴン中心部から南に約23キロ。ミャンマーが日本に開発を委ねる方針のティラワ港地区周辺もそうだ。
「ティラワ港の1区画が1億チャット(約1千万円)で売りに出ている。経済特別区(SEZ)の用地にも売りものがあるよ」というのは、計画地のすぐ脇で食料品店を営みながら不動産仲介も行うエー・マウンさん(53)だ。
同国政府の説明では、ティラワ港地区開発は土地を南北に分け、南側3170エーカー(約1283ヘクタール)を工業特別区(SIZ)、北側2300エーカー(約931ヘクタール)をSEZとする計画だ。
◆外国人は購入できず
エー・マウンさんによると、昨年、ある日本人がSIZの土地5エーカーと、ミャンマー政府が開発する別の地区の土地9エーカーを買った。ミャンマーでは 外国人が不動産を買えないため、夫人名義で買ったようだが、当時の価格はSIZ内の土地が1エーカーで約250万円、周辺地区で同40万円。日本人以外の 引き合いも多く、今はSIZ内が約500万円と倍に値上がりしている。
「ぜひ、日本に(ティラワに)来てほしい。日本は技術も持っているし、雇用も増えるからね。うちもレストランを開くよ」とエー・マウンさん。
SEZのそばでは戸建て住宅建設が進んでいた。1区画8千平方フィート(約743平方メートル)の土地付き住宅94戸は昨年11月に造成が始まり、夏ま でに完成する予定だ。「経済特区ができるのは知っている。値段はこれから決まるが、ミャンマー人が買って外国人に貸すことになるだろう」と現場責任者の一 人が語った。
まだ何もないティラワですら土地騰貴や住宅建設が進むのだから、急増する外国企業の駐在員や家族用の住宅不足が指摘されるヤンゴン市内はなおさらで、コンドミニアムやサービスアパートの建設ラッシュだ。
◆権利関係の整備急務
ヤンゴン中心部、ボージョーアウンサン・マーケット北側に完成したばかりのコンドミニアムは外国企業の引き合いが多く、連日、外国人が見学に訪れる。
施工した地元の大手建設会社によると、このコンドミニアムは24時間警備で、トレーニングルームやプール、売店など、シンガポールやバンコクのコンドミ ニアムと同様の施設を備えている。値段は北向き約144平方メートルの部屋が2億5340万チャット(約2534万円)から。南向きだと138平方メート ルで約2960万円と、バンコク並みだ。
もっとも、コンドミニアムも土地と同様、外国人や外国企業の名義で買うことはできず、現時点ではミャンマー人の名義を借りるしかない。外国企業もミャン マー人社員の名前で登記しているという。ミャンマー政府は外国投資法などの整備を進めているが、今後、本格的な投資を呼び込むには、こうした権利関係の整 備が喫緊の課題となる。(宮野弘之)