3月29日(木)16時49分配信
[28日 ロイター] 約50年続いた軍事政権が解散しセイン政権が発足してから1年、ミャンマーは海外からの投資を呼び込み国内経済の立て直しを目指す。
欧米の経済制裁が解除されれば、ミャンマーの石油・天然ガス、宝石や鉱物は、海外企業にとり魅力的な投資先となる。
以下、ミャンマーの経済や投資環境についてまとめた。
◎経済規模
前軍事政権によると2004─2009年の成長率は年率10─13%だが、エコノミストの間ではこの数字は信ぴょう性に欠けるとの指摘がある。
国際通貨基金(IMF)予測によると、2012年成長率は5.5%。2011年についても同水準になったと予想。
政府の2012/13年度(2012年4月からの1年)の成長率予想は6.7%。
米国務省によると2011年の経済規模は402億8000万ドル。
◎通商・投資
近隣諸国やアジア各国が最大の貿易相手国。
年次ごとの外国直接投資(FDI)データは公表していないが、累計データによると、中国からの投資がトップ。タイ、香港、韓国と続く。海外からの投資では全体の47%が発電関連、34%が石油・天然ガス事業。
◎輸出
天然ガスが最も魅力的な輸出品で、現在最大輸出国はタイ。ベンガル湾から中国雲南省までパイプラインが建設されれば、石油・天然ガスの輸出は急増する見通し。
政府が1月に公表した天然ガス埋蔵量は22兆5000億立方フィート。これは石油メジャーBPの試算の11兆8000億立方フィートの約2倍。
チーク材や硬材、衣類なども輸出品としては有望だが、近隣諸国との競争は激しい。豆や魚介類もかなり輸出している。
政府が農業改革を推進すれば、コメが有望な輸出品として期待されている。英統治下でミャンマーは世界最大のコメ輸出国で、1934年の輸出量は340万トンに達した。政府当局者によると、2011年の輸出量は72万2000トン。
◎銀行セクター
銀行システムが抜本的に改革されれば、制裁解除や為替制度の改革も進む見通し。ただ、中銀当局者や金融関係者は、金融の専門家がほとんどいないことから、金融システムの改革には時間がかかるとの指摘がある。
中央銀行は昨年11月、国内17行に外貨両替サービスの提供を認めた。海外銀行サービスの提供は11行が認可されている。海外に支店を開設している銀行は4行で、海外在住のミャンマー人向け送金サービス主業務。中国の銀行数行が人民元送金サービスを行っている。
10カ国20の外資系銀行が代理店設立の認可を得ている。その大半は東南アジア地域の銀行。複数の欧州銀行も代理店設立に意欲を示している。
◎民営化ブーム
2009年には、不動産、ガソリンスタンド、有料道路、港湾、船舶会社、航空会社など、約300の公共資産が売却された。
◎為替改革
通貨チャットは1ドル=6.4チャットの水準でペッグされているが、闇市場のレートは1ドル=800チャットに近い。ここ数年エネルギーや宝石用の原石セクターに大量の資金が国外から流入し、チャットは対ドルで大幅に上昇し、国内産業に打撃を与えている。
◎投資
石油や天然ガス分野の開発で海外からの投資を呼び込みたい考え。政府は今年1月、ここ数年で最大規模となるエネルギー開発の入札を行い、8企業(その大半はアジア企業)が石油・天然ガス10鉱区の権益を獲得した。今後6鉱区の入札も予定されている。
観光業にも力を入れている。2010/11年度の旅行者数は42万4041人。一方、国内ホテルは常に不足している。ホテル数は現在570、ゲストハウスは160。今後数年で旅行者が100万人を突破することを目指している。
◎投資リスク
ミャンマーには政治的腐敗や官職めぐる縁故主義、不透明な規制、熟練労働者の不足など多くの問題があり、投資に伴うリスクはかなり大きいとみられている。
資本流入の急増に対処する準備ができていないことから、エコノミストの間では早期の制裁解除はかえって混乱をもたらす、との見方もある。