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日本のミャンマー投資、道筋なお時間 環境整備・資金確保に課題


 ミャンマーに千葉交通

経団連は今月上旬、ミャンマー、カンボジ アに総勢140人余りと過去最大規模の訪問団を派遣した。訪問団がとりわけ大きな関心を示したのが「アジア最後のフロンティア(新天地)」と呼ばれるミャ ンマーだ。日本企業はミャンマー向け直接投資で中国や韓国などに水をあけられており、挽回に躍起になっている。ただ、事業環境の整備は十分とはいえず、進 出にかける思いが空回りするリスクもある。
 2006年10月にヤンゴン(旧ラングーン)から遷都したミャンマーの首都ネピドー。近代的だが、閑散とした空港で待っていた迎えのバスには「千葉交通」と書かれている。日本の中古車が流入しているのだ。
 真新しい道に対向車はない。ときおり1~2人が相乗りした二輪車が並走するだけで、渋滞とは無縁。車窓から見えるのは草をはむ牛や木陰で休憩する農民、 金色に輝くパゴタ(仏塔)など、近代経済とは無縁の、のどかな風景だ。
 長い軍事政権から民主化に歩み出したミャンマーは市場開放を徹底し外資を呼び込む戦略を進めている。テイン・セイン大統領は経団連の訪問団に「ミャン マーはインドや中国などの大市場を周囲に抱え、世界で最も投資すべき国だ」とアピールした。ミャンマーには地理的に中印に近いというだけでなく、中東やア フリカ向け輸出基地にもなるという地の利がある。原油や天然ガス、銅などの天然資源が豊富な上、工場を建設した場合にも識字率が約9割と高く、若く安価な 労働力が期待できること、さらに親日的で手つかずの約6000万人の市場があることが進出企業にとっての魅力だ。
 日本企業はこれまで、ミャンマー向け直接投資額で中国や香港、タイ、韓国などアジア主要国の後塵(こうじん)を拝している。「NATO(ノーアクショ ン、トークオンリー)」と揶揄(やゆ)されるほど決定に時間がかかることがあだとなり、「日本企業を上回る勢いで韓国企業がどんどん来ている」(現地の通 訳)という。
こうした中でのミャンマー政府からの熱烈 なラブコールに、日本企業の間には「バスに乗り遅れるな」とのムードが強まっている。欧米の対ミャンマー経済制裁解除に続き日本政府による円借款再開や、 中国との対立激化などが日本企業をミャンマー投資へと駆り立てている。
 首都ネピドーには丸紅、三菱商事など大手7社が拠点を据え、IT、ゼネコン、金融業界も相次ぎ進出。ヤンゴン市北部近郊のミンガラドン工業団地では婦人 服製造のハニーズ(福島県いわき市)などが操業し、王子ホールディングスは段ボール工場の建設準備を進めている。スズキは5月から小型トラックの生産を始 める計画だ。
 ただ、経済インフラ整備は緒についたばかり。生産に不可欠な電力供給は質、量とも不安定。原料や製品を輸送するための道路や鉄道や上下水道、証券取引所 の整備が求められている。それだけではない。長く軍事政権が続いたため、産業を担う人材が不足している。中古車や電気製品の輸入規制は緩和されたものの、 外貨送金の自由化、ビザ発給円滑化などビジネス環境の整備も急務といえる。
 さらにはインフラ整備に必要な資金をどう確保するか。経団連の米倉弘昌会長は「将来的には官民連携(PPP)方式でやっていく。アジア債券市場を確立さ せ、地場経済界を巻き込んだ形でやっていきたい」と展望するが、具体的に道筋を付けるにはなお時間がかかりそうだ。
(早坂礼子) 
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