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ミャンマー テイン・セイン大統領、選出から1年

■「統制が取れた民主主義」信奉

 【シンガポール=青木伸行】ミャンマーのテイン・セイン大統領が連邦議会で選出され、4日で1年。大統領にとり、「民主化の軟着陸」へ向け、民主化運動指導者アウン・サン・スー・チーさんと微妙な“二人三脚”で歩んだ1年でもある。それぞれ思惑を秘めた2人の関係が、今後の民主化の大きなカギを握る。

 昨年3月30日のテイン・セイン政権発足後、民主化が顕在化したのは5月16日。政治犯を含む恩赦が実施され、それ以降、民主化措置が小出しにされた。

 その前にも“合図”はあった。政権発足翌日の施政方針演説には「国民の声を尊重」「全国民の参加」など、軍政時代には聞かれなかった民主的な表現がちりばめられていた。4月11日には、スー・チーさんに近い経済学者のウ・ミン氏を大統領顧問の一人に起用した。同氏はその後、スー・チーさんと大統領との会談を仲介している。

 アジア経済研究所の工藤年博氏によると、大統領は(1)権力の正統性の回復(2)国際社会への復帰(3)経済発展-という「国家の威信回復」を目標にしている。そのための改革と民主化だ。大統領は、スー・チーさんとは「家族ぐるみの付き合いだ」と語っている。国内外に影響力があるスー・チーさんへの接近も、国際社会の認知と国民の支持を得て民主化の軟着陸を図るためのものだ。

 大統領は政治犯の釈放などにより、「アラブの春」のような事態を招くことを懸念しているとされる。そのことは「国家の将来は平和と安定にかかっている。経済発展の優先順位は2番目だ」との最近の発言にも垣間見られる。

 スー・チーさんは政権と民主化勢力との“パイプ役”といえる。大統領は、スー・チーさんが4月1日の連邦議会補欠選挙で当選し「議会の承認を得たら、閣僚として受け入れることになる」と入閣にも言及している。

 スー・チーさんにしても、政治犯の釈放などで政権から譲歩を引き出し、徐々に民主化を誘導し実現していく思惑がある。だが、入閣には「政権側に取り込まれるだけ」との異論が、民主化勢力の一部にある。

 今後の民主化について「後戻りするつもりはない」と強調する大統領は、「統制が取れた民主主義を信じる」とも語る。その心が、統制色が強い「ミャンマー式民主主義」にあるとすれば、「呉越同舟」の2人の「同床異夢」ぶりが顕著になる可能性もある。
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