3月12日(月)21時48分配信
【シンガポール=青木伸行】「自由、公正」なものとなるかどうか、国際社会が注視するミャンマーの連邦議会補欠選挙(4月1日投票)は、各党代表による政見放送の演説草稿が事前検閲により、部分的に削除、修正されるなど黄信号がともっている。
政見放送は録画で、各党は演説草稿を事前に情報省に提出しなければならない。14日に政見放送が予定される国民民主連盟(NLD)の党首、アウン・サ ン・スー・チーさんは「軍政は法を、国民を抑圧するために繰り返し利用してきた」と批判した段落が、削除されたとしている。
スー・チーさんはまた、「有権者登録名簿に多くの不正が見つかり、選挙管理委員会に善処を求めている」と明らかにしている。
NLD関係者によると、例えば最大都市ヤンゴンの選挙区の一つでは、死亡、あるいは他の選挙区へ転出した市民が名簿に含まれ、その数は名簿に記載されている約2千人のうち、1181人にのぼる。1世帯全員が名簿から抜け落ちている事例もあるという。
そこに「不正」の余地がある。関係者は「政権と与党・連邦団結発展党(USDP)が、死亡した複数の市民の名前を使い、1人で何回もUSDPに投票できる。逆に名簿に記載がなければ、NLD支持者は投票できない」と解説する。
別の野党の関係者は「2010年の総選挙のときも重複投票があり、状況は同じだった」と言う。
有権者登録名簿は10年の総選挙時のものを踏襲している。選挙管理委員会は2月29日から3月6日まで、名簿の誤った情報の修正を受け付けた。だが、通達が届いたのは、シャン州内のある選挙区の場合、締め切り当日の6日だった。
票が現金で買収されているとの情報も絶えない。首都ネピドー郊外の村では、当局が「NLDを支持すれば電気を供給しない」と圧力をかけているという。
欧米は選挙監視団受け入れをテイン・セイン大統領に要求している。だが、東南アジア諸国連合(ASEAN)の選挙監視団を含め依然、決定されていない。