ヤンゴンの国民民主連盟(NLD)の選対本部では赤いTシャツなどスーチーさん関連グッズが飛ぶように売れていた=2012年3月29日、杉尾直哉撮影
【ヤンゴン杉尾直哉】ミャンマー民主化の行方を占う議会補欠選挙が4月1日に実施される。国民民主連盟(NLD)を率いる民主化運動指導者、アウンサンスーチーさんの選出が確実視されており、ニャンウィンNLD選対本部長(69)は毎日新聞の取材に「自由で公正な選挙が実施されれば大勝利を収める」と述べた。ヤンゴンの選対本部を29日、訪ねると、民主化への歴史的な一歩を前に支持者の熱気で包まれていた。
選対本部ではスーチーさんの絵をあしらった赤い色のTシャツや、スーチーさんのカレンダーなどが飛ぶように売れていた。談笑する支持者は勝利を確信している様子だ。元中学校教師のティンミインさん(57)は「スーチーさんがやっと国政に参加できる。軍支配時代の終わりの始まりだ。私たちの時代が今始まろうとしている」と興奮気味に話した。
地元の新聞は連日1面でスーチーさんの動きを大きく報じている。選管は「不偏不党の報道」を規定しているが、守られていないのが実態だ。雑誌記者の男性(27)は「NLDのニュースを読みたい読者のニーズに応えるためだ」と説明した。
今回の補選では、10年総選挙後、空席となった上院(定数224)の6議席、下院(同440)の37議席、地方議会の2議席の計45議席が争われる。NLDは44人の候補を擁立しているが、圧勝しても議会少数派にとどまり、軍を支える与党・連邦団結発展党(USDP)が多数派の構図は変わらない。それでも多くの支持者は「スーチーさんの勝利は15年次回総選挙の勝利に向けた第一歩」と位置づけている。
ミャンマー政府は今回、欧米などから初めて選挙監視団を受け入れており、公正で自由な選挙となるかどうかは民主化の進展を見極める試金石と受け止められている。だが、ニャンウィン氏によると、USDP関係者がNLD支持者に暴力をふるうなどの妨害が相次ぎ、警察に訴えても真剣な捜査がされていないという。
ニャンウィン氏によると、ミャンマー中部のパコクで28日、選管関係者が民家に集まって打ち合わせをしようとしたところ、NLDの集会と勘違いした暴徒が乱入。2週間前には首都ネピドーでNLD集会に参加していた女性支持者が与党支持者と思われる男から竹やりで刺されて負傷する事件も起きたという。
ニャンウィン氏は「テインセイン大統領は民主化を目指しているかもしれないが、他の政権幹部がこれに不満を持っており、政府内で足並みがそろっていない可能性がある」と指摘した。監視団の受け入れについても「投票日直前の招待であり、選挙運動などを含めたプロセス全体の監視ができない。投票日当日に監視団は投票所への出入りが禁じられ、活動は限られている」と批判した。